近年、体育館や集会場、ドーム、木橋などの大型木造構造物が各地で建設されています。 そこで使われ、注目されているのがエンジニアドウッド(Engineeredwood products、EW)です。
EWは
(1)構造部材として使われる木材製品
(2)構造計算に必要な力学的性能値が工学的な手法によって実測あるいは推定されている
(3)その値が明示されているという3つの条件を満たしているものです。広く木質材料(接着製品)全般を指すものではありません。
1)EWは構造物の安全性を高めるために必要ですが、耐久性については、全く対象になっていません。また、EWだからといって、すべての力学的特性値が明確になっているわけではなく、実測されるヤング率を除くと曲げ強度は推定値であり、せん断強度は不明です。
2)目視等級区分された乾燥製材の取り扱いは議論の分かれるところです。未乾燥材であれば力学的特性の保証は困難で、最も基本的な力学的特性値であるヤング係数が未知なので、EWにはなり得ません。産地など母集団を限定し、目視による等級区分に対応する強度値を実験によって定めた場合には、信頼性は低いにしてもそれなりの構造計算は可能となります。なお、EWは“素材を除く工業製品”とする見解は論外でしょう。EWに該当する主な製品は3)械等級区分製材(MSR材):MSR材はヤング率を機械により測定し、それらを等級区分することによって、等級に見合った強度の評価を得ようとするものです。
4)構造用集成材:厚さ2、3cm程度の挽き材(ラミナ)を、大きな節、腐れなどを除去し、縦継ぎ、幅矧ぎしたラミナは全数をMSR材として計測することができます。それを集成材の強度を推定し、また逆に設計することができます。JASの構造用集成材は断面の大きさ、使用環境によってラミナの構成、使用接着剤、強度等級区分などが細かく規定されています。建造物では出雲ドーム(島根)、やまびこドーム(長野)、樹海ドーム(秋田)が、それぞれベイマツ、カラマツ、スギの大断面集成材を使用し、ドームの直径がいずれも100mをこえる雄大なものとして知られています。
5)構造用合板/単板積層材(LVL):構造用合板は所定の強度試験が義務づけられ、単板の厚さや構成が規定されています。LVL(laminatedveneerlumber)は単板を繊維平行方向に積層接着したもので、短い単板から長い材を作ることができます。構造用LVLは単板の厚さ、積層枚数、接着剤などが規定され、強度性能によって等級区分されています。
6)配向性ボ-ド(OSB):OSB(oriented strand board)はパーティクルボードに比べて削片の形状が大きく、配列に方向性を持たせてあるため、その方向の強度性能が向上しているボードです。原料の削変と接着剤ならびに製造条件によって性能を予測します。最近建築の下地材として利用が増えています。さらに、EWとなり得るる材料にたてつぎ材、PSL(parallelstrand lumber)、各種複合梁などがあります。
「文献」特集 エンジニアリングウッド、木材工業 47,11(1998)林知行:エンジニアドウッド、日刊木材新聞社(1998)